愛と感動の詩/人魚と少年
その時少年は 海原を見ていた
耳を澄ますように 瞳を凝らして
水平線から 現れたものは
おとぎの国の 紛れもないそれだった
信じる者にしか 見えないそれは
にっこり微笑んで 揺らいでみせた
人魚と少年は やがて恋に落ち
人間になりたいと 人魚は泣いた
一度の願いなら 叶えられるけど
少年は首を 縦に振らなかった
醜い人間の 世界がわかるから
苦労させまいと ひたすら耐えた
東が染まる頃 祈りが明けるように
少年の瞳に 決意がにじんだ
神様お願いです 人魚になりたいと
一度の願いを 少年は使った
二頭の人魚は 寄り添い合うように
確かめ合うように 海原に消えた
季節が過ぎ去り あの海原に
二つの影が 肩よせ合って
四つの足跡は 海から浜へと
おとぎのそれだと すぐに判った
人間になることを 許された二人は
誰もがうらやむ 手本となっていた
神話や御伽噺は単なる空想物語ではなく、喩話に形を変えた実話に近いものです。そこには明白にすることが出来ない事情があるのですが、開示出来ないと言うのではございません。開示する為の条件が必要になるだけです