愛と感動の詩/最終便


残り柿を啄ばむ小鳥の くちばしは赤い
貴方が出てから　指折り数えて曼珠沙華、燃ゆる
一枚の書置き残して 玄関を後にした
昨日の事のように 覚えています
週に三度の便りも 盆と暮れの二回だけ
今年こそ帰ると オオムが鳴いた
暮れる季節になると 柿の顔ばかり見ている
最後の一つが ポトンと落ちるまで


騒々と胸騒ぐように 落葉が逝く
便りの無いのは無事の知らせと 独り言をいう
やっと届いた便りに 最終便と名付けた
抽選番号付きの 一枚のハガキ
先月仕事が変わったと そこだけ小さく書いてある
出来たら金送れの 暗号のように
白い季節になると 柿の枝ばかり見ている
早く雪解けて 緑が覗くように

週に数回書いていた手紙も最後には書く事がなくなって、滞りがちになるものです。
待つ者としては、便りの無いのは無事の知らせと本心から思えるはずもなく、
不安の波紋は広がってゆくばかり。そんな時には文字ではなく、物を
送りましょう。写真でも和菓子でも漬物でも、何でも良いのです。
貴方の無事を知らせる為に